「人は武士、柱は檜(ひのき)、魚は鯛」と言われるくらい日本人にとって鯛は魚の中の魚であるとされています。姿・色・味と三拍子そろった魚として古くから祝い魚として用いられてきました。
鯛の薄赤い色はお祝いの色で、「鯛」と言う名前は「めでたい」に通じます。
結婚式と言うと昔から鯛が付き物で、キリスト教スタイルで挙式をしても料理に「鯛のオカシラツキ」と言うのが珍しくない現象です。
では鯛であればどんな鯛でもいいのかと言えば、そうではありません。
先ずは形が整っていて新鮮でなければいけません。つまり、切ったり形が崩れたりした鯛は不可と言うことです。
「オカシラツキ」と言われますが、オカシラを漢字で書くと「御頭」だと思ったら「尾頭」が正解なんです。
つまり尾から頭まで全て揃っている魚を意味します。かつて、豊作や無病息災を神様に祈願する際に、神様の好きな鯛をお供えして神事を執行しました。
神様にお供えする鯛なので、新鮮で姿形のよい鯛が求められるわけです。だから尾頭になったと言われています。
そして、神事が終わりお供えしていた鯛は当然食べられる訳ですが、神様にお供えした鯛を食べるのだから、ありのままの姿で美しく食べなければいけません。
だから和食では、一匹丸ごとの魚の美しい食べ方が問われるわけですね。
和食には豊かな精進文化が存在するんですね、意味深いことです。